
私が朝美絢に落ちてから始めて見た宝塚歌劇作品となりました。
とにかく朝美絢が見たい一心で衝動的に購入し、事前情報が何もない状態で見ましたが、タカラジェンヌという存在をいささか勘違いしていたなと反省した次第です。
以下ネタバレありの感想です。
望海風斗というおばけ現る
妙に艶やかな女性(*彩凪翔さん)と、場数がレベチな人(夏見ようさん)がチェスに興じているところから始まります。
*このお芝居とセットのショー「SUPERVOYAGER」で腰グイグイやってるドSな凪様と同一人物と知った私はタカラジェンヌという概念がぶっ壊れました。
ロベスピエールの半生を描いた「ひかりふる路」は、雪組トップスター望海風斗さんと、トップ娘役真彩希帆さんの大劇場お披露目公演でした。
(大劇場の前にプレお披露目公演というものがあり、「琥珀色の雨に濡れて」という作品です)
朝美さん目的で再生した冒頭、ソロ歌唱で歌い上げる朝美さんに、当時番手やらなにやら宝塚のセオリーなどまるで知らない私は「メインキャストなんだ!めっちゃ声がいい!華やか!!」ときゃっきゃしておりました。
そしてセリ上がってくるトップスター望海風斗。
歌いだしの1音を聞いた瞬間「なにこの歌うまオバケ」と目が点に。
え、こんな人いるの?宝塚に?
派手ー!キラキラー!愛してるー!どやー!
じゃないの??
「自由のために~」と歌い上げるトップスターに、私はひかりふる路の世界に連れて行ってもらいました。これが宝塚のトップスターというものか…(え?これトップ1作目なん?嘘やろ)
続いてなんだか勝手にトップスターを逆恨みする可愛らしい娘さんがナイフ持ってご登場。
トップ娘役真彩希帆さんでした。FNSで聖子さんとラプンツェル歌ってた人。
物語は、フランス革命の真っただ中、望海さん演じるフランスの革命家が、己が思い描く理想を実現しようと改革を推し進めるうちに、仲間や愛する人との思想の違いにより孤立しながらも政治の中心人物として祭り上げられ、理想との乖離に苦悩していく…というお話です。
朝美絢という存在に出会えた幸せ
朝美さんは、ロベスピエールの右腕と言われたサン=ジュストという人物を演じています。その美貌と冷厳な革命活動ゆえに「革命の大天使」または「死の天使長」との異名をとったとされる人物。
うん、美しすぎて恐怖
この作品の中で、ロベスピエールを孤独なロベスピエール像にしてみせたのは、サン=ジュストの作りこみが左右していたのでは思わせるほど重要な役。
もちろん、言うまでもなく望海さんのロベスピエールが素晴らしかったのは当然で、そこ大前提なんですけど、ロベスピエールを心から崇拝し、誰にも付け入る隙のない愛情がサン=ジュストから注がれているからこそ、ロベスピエールが中心にいて当然だと印象づけられた。
それを朝美さんのお芝居でしっかりと見ている側に伝えられたことで、ロベスピエールが孤独に向かっていく様が分かりやすく描かれていたと感じました。
ロベスピエールを見るサン=ジュスト目には、曇りがない。
「私が尊敬するあなたが政治の中心にいて当然です」
というブレない信念がこちらにも伝わり、その精神がロベスピエールにも深く刺さり苦しむことになっていく。
ロベスピエールを担ぎあげる場面、銀橋の真ん中へ誘う朝美サン=ジュスト。
上手側から数メートルなんですが、「理想の人」が真ん中へすすむことを恍惚の表情で見守る狂気の愛を体現する朝美絢。
笑顔が怖い。
戸惑いながらも0番へ歩くロベスピエール。
戸惑い・悲しみから裏切った友への怒りへ、革命を成功させるために己を律した感情の波は圧巻でした。さすがトップ。
面白いなと思ったのが、担ぎ上げているのはサン=ジュストなんですけど、それをロベスピエールは気づいていないというか、自分の意志で恐怖政治へと舵を切っているように思いこんでいるような演出だったように感じました。
サン=ジュストがロベスピエールをバックハグするんですが、それをスっと流しているように見えるんですよね。
理想←ロベスピエール←サン=ジュスト
という感じで一方通行。サン=ジュストの行動は勝手な片思いだったんだなと思った理由は、最後の裁判の場面です。
ロベスピエールが「粛清されなければならないのは私だ」と言った瞬間の朝美さんの目を見てほしい!
スンと光が消えます!マジで!
DVD、宝塚千秋楽、東京千秋楽、NHKBS版をすべて見て、少しづつニュアンスは変わりますが、時には「崇拝していたものが一瞬にして壊れた」幻滅感…時には「なにこのオモンナイ展開」みたいな興ざめ感。
重い愛情が憎悪に変わるんじゃないかと思っちゃうくらいの冷たい目になるんですよ。
ロベスピエール!!後ろ!後ろ!!!
状態です。
逃げて。
ロベスピエールが銀橋でバックハグをスルーした感じは、やっぱりサン=ジュストの思いは一方通行だったんだなと回収しました。
この作品が男役朝美絢との出会いですから。
見終わったらそこはもう沼底でした。
キャスト別感想
【望海風斗】
先ほども触れましたが、歌がうますぎて思考停止。
冒頭の「夜明けの空を~」だけでご飯おかわり!
顔も綺麗だしさ、ハーフアップとリボンめちゃくちゃ似合うやん。
こんな美形が、精神ズタボロになって歪んだ恐怖政治に手を染めるんだぜ。
恋人と語り合った理想を自らの手で壊していく、二重人格のような振る舞いにサン=ジュストとは違う狂気を帯びているなとただただ関心しきり。
処刑される前に恋人と歌う「今」の歌詞が↓こちら
さぁ、もう一度見せて欲しいんだ
ただ君の笑顔だけでいい
他に何もいらないと思える
彼の微笑んだ瞳の奥に
燃える理想を信じれば
止まる時の中いまを愛せる
いま懐かしい日々を裏切り
過去に別れを告げれば罰は降るわ
過去に何があろうと構わない
罪を分かち合い罰なら共に受けよう
もしも僕を愛せるなら
過去を2人でぬけだして
未来信じて生きていこう
今壊れる世界で生まれた
愛の行方求めて2人旅立とう
もう離れることなどできない
荒れ狂う嵐の中を恐れず行こう
2人で
2人で
未来へ
もうぐうの音も出ん。涙のバルブは閉めれませんでした。
死を目前に、生と死で別れようとも、未来へと歌う二人…
これがお披露目でいいのか?
【真彩希帆】
真彩さんは架空の人物らしいですが、ロベスピエールを恨んでいたはずなのに、彼の思想を知って愛していく元貴族の娘マリーアンヌ。
この人もFNSで綺麗な声だな~と思って認識はしてましたけど、こんなにも嘘のないお芝居を感じるとは思ってもおらず。
「愛した人を殺すなんてできないわー!!!」の歌い上げは、痺れましたね。
トップさんと上手、下手で対で歌っていたので、これが私のセオリーになっちまったんですが、真彩さんだからこそのポジだというのは後々知ります。
クリアで清らかな声質は誰の声も邪魔せず、誰にも邪魔されないなんとも稀有な声だなと。
生で聞いたらどう感じるんやろ。
【彩風咲奈】
ロベスピエールの親友ダントン。ともに革命を成し遂げようと同じ志を持っていたが、水面下で他国と通じ王料金を流していたことがロベスピエールを怒らせ処刑される。ロベスピエールになくてはならない人だったのに、うまく歯車がかみ合わず決別していく友人の役でした。
ロベスピエールとは相反する豪傑なキャラだったのか、少し大げさな芝居という印象でしたが、このキャラもまたサン=ジュストと同じように「いてこそ主役が主役になれる」重要な作り方だったと思います。
【彩凪翔】
最初にもいいましたが艶の塊マノン・ロラン夫人です。宝塚に叶姉妹の姉妹いたんだ~。
ロベスピエールと対立する議員の妻だけど、フランスの政治家とよからぬ関係になっております。そりゃその美貌なら政治家転がせるよな~って納得するし、処刑される直前も衛兵の手振り払って「この私に触らないでちょうだい ふんっ」て背中に書いてあるもんだから、女は凄い。
実際には【自由よ、汝の名の下でいかに多くの罪が犯されたことか】というセリフを残して断頭台に立ったというから、これ聞きたかったな~と思ったけど、これ言わせると凪様全部かっさらうことになるからワザとかな?どうよ。
まとめ
というわけで、朝美絢がトップになったらサン=ジュスト主役のオリジナル作品あってもよくない?っていうくらいハマリ役でした。
その場合はロベスピエールの役者置かないでね、望海さんのイメージ強すぎるから。
朝美サン=ジュストを生み出した責任を取ってもらいましょう!ね、生田先生!
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